ATMoS(Android Experiments OBJECT 特別賞作品)
2016 - 2017
01. Context
Google が2016年に実施した「Android Experiments OBJECT」の特別賞作品として制作・展示された。
このプロジェクトのテーマは、「Android というプラットフォームをアクセサリ的に拡張するのではなく、Google が持つアセット(クラウド、各種サービス、AI 開発基盤)を使って Google だからこそ実現できる新しい体験は何か」。「気象情報の非対称性」── 生活に最も影響を与える環境情報なのに、難解で生活に反映しづらいというギャップ ── を、エッジデバイス × クラウド × 対話型 AI の組み合わせで解こうとする提案だった。
02. Concept
タグラインは「気象観測が、もっと身近になる未来へ」。コンセプトを「人類を気象災害から救うアンドロイド」として、観測・分析・伝達の三軸で組み立てた。
- 観測:360度カメラ、音声、位置、匂い、紫外線など、スマートフォンには実装されにくいニッチなセンサーをすべて備えたデバイス。普及済みのスマートフォンを通信インフラとして借りることで、低コストに地球規模の環境観測網を構築する構想
- 分析:世界中の ATMoS から集まる画像・気象・位置データを、Google Photo や Google の各種クラウドサービスと結びつけて高度に解析。家屋限定の天気予報のような細やかなものから、地震や津波のような重大事象まで、共通の観測網から取り出す
- 伝達:表情を表示する液晶を備え、「気分はどう?」のような問いかけにユーザーがタップで答えていく対話型インターフェイス。やり取りを重ねるなかで、デバイスが個人の体調・趣味嗜好・気象への理解度を学習し、その人に合わせた言葉と粒度で気象情報を返す
「センサー内蔵のエッジデバイスが、対話を通じて個人を学習し、クラウド AI と連携して環境の意味を翻訳する」── 中央 AI とエッジ AI の組み合わせを前提に置いた、当時としては先取りの設計思想だった。
03. Structure
コンセプトを、デバイス・ソフトウェア・展示の各層に翻訳した。
- Hardware(初版):360度カメラ二基、表情液晶、操作タッチパネル、ストラップホールを備えた携帯/設置両用のコンセプトデバイス。提案段階で目指したフルスペック構成
- Hardware(リデザイン版):展示用に再設計したコンパクトな縦型筐体。前面の単一カメラ、表情を表す目のような液晶、「今の気分は?」「ここちよい!」「居心地悪い…」のシンプルな選択式タッチ UI を備え、対話体験の手触りを最大化したかたち
- Implementation:充電式バッテリー内蔵、防水防塵仕様、Bluetooth & WiFi 通信。プロトタイピングは Raspberry Pi に主要センサーモジュール群を組み合わせた Linux ベースのハードウェアとして構成
- Interaction:表情と短文による問いかけ、ユーザーはタップで応答するシンプルな対話型 UI
- Companion App(Android):デバイスとペアリングする専用アプリ。現在地の気象、ユーザーの ToDo や行動傾向と気象を結びつけた個人化アドバイス、Google マップ衛星画像を背景にした周辺の災害観測ビューを実装
- Installation:傾斜モニターに地球儀をリアルタイム可視化した展示装置を設計・実装。世界各都市から気温・湿度・気圧・天気・ユーザーフィーリングがデータポイントとして噴き上がる演出で、「世界中の ATMoS が連携して観測網を作る」というコンセプトを空間体験として提示。下部に複数の体験ステーション(ATMoS + Android 端末)を配置し、来場者の入力がリアルタイムで地球儀に反映される動線まで含めて構築
- Exhibition:2017年3月、二子玉川 蔦屋家電にて展示
コンセプトから、ハードウェアの二度の設計、コンパニオン App、展示インスタレーションまでを一貫して手掛けた。
04. Role & Engagement
- Mode: Concept Design / Prototype
- Duration: 2016 - 2017
- Touchpoints: 概念設計 / 構造設計 / 展示インスタレーション
05. Outcome
200を超える応募から選ばれた Android Experiments OBJECT 特別賞作品として、2017年3月に二子玉川 蔦屋家電で展示。Google Japan ブログでも「地球気象に関する観測、分析、伝達における課題をインターネットテクノロジーで改善することを目的としたデバイス」として紹介された。
06. Voice
センサーを内蔵したエッジデバイスが、対話を通じて個人を学習するモデルを、2016年にコンセプトとして形にした事例。